医療機器修理業
医療機器の修理業の許可を受けた者でなければ、業として、医療機器の修理を行うことはできません。
医療機器修理業の許可は厚生労働省令で定める修理区分に従い、修理をしようとする事業所ごとに与えられます。
したがって、修理を予定する医療機器の修理区分を事前に把握しておく必要がありますので、厚生労働省通知「医療機器の修理区分の該当性について」(平成17年3月31日付薬食発第0331008号)の別表「修理区分の該当性一覧」にてご確認ください。
修理の定義
許可を取得しなければならない医療機器の修理とは、故障、破損、劣化等の箇所を本来の状態・機能に復帰させることをいいます。(当該個所の交換を含みます)。
故障等の有無にもかかわらず、解体の上点検し、必要に応じて劣化部品の交換などを行うオーバーホールも修理に含まれます。
清掃、校正(キャリブレーション)、消耗部品の交換等の保守点検は修理に含まれませんので、修理業の許可は必要ありません。
医療機器製造業許可を取得している場合において、自ら製造(包装、表示又は保管のみの製造は除きます)をする医療機器の修理は、製造に含まれるものとして、修理業の許可は必要ありません。
修理業を紹介する行為のみ行う場合は、修理業の許可は必要ありません。ただし、実際に修理を行わない場合であっても、医療機関等と医療機器について修理の契約を行う場合は、修理された医療機器の安全性等について責任を有することになりますので、修理業の許可が必要になります。
なお、医療機器の仕様変更のような改造は修理の範囲を超えるものとなり許されておりません。
医療機器の修理区分
修理業の許可は、厚生労働省令で定める修理区分に従い、事業所ごとに与えられます。
修理の区分は以下の9つに分けられています。
特定保守管理医療機器の修理 |
特定保守管理医療機器以外の 医療機器の修理 |
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特管第一区分 | 画像診断システム関連 | 非特管第一区分 | 画像診断システム関連 |
特管第二区分 |
生体現象計測・ 監視システム関連 |
非特管第二区分 |
生体現象計測・ 監視システム関連 |
特管第三区分 | 治療用・施設用機器関連 | 非特管第三区分 | 治療用・施設用機器関連 |
特管第四区分 | 人工臓器関連 | 非特管第四区分 | 人工臓器関連 |
特管第五区分 | 光学機器関連 | 非特管第五区分 | 光学機器関連 |
特管第六区分 | 理学療法用機器関連 | 非特管第六区分 | 理学療法用機器関連 |
特管第七区分 | 歯科用機器関連 | 非特管第七区分 | 歯科用機器関連 |
特管第八区分 | 検体検査用機器関連 | 非特管第八区分 | 検体検査用機器関連 |
特管第九区分 |
鋼製器具・家庭用 医療機器関連 |
非特管第九区分 |
鋼製器具・家庭用 医療機器関連 |
※ 特定保守管理医療機器:保守点検、修理その他の管理に専門的な知識及び技能を必要とすることからその適正な管理が行われなければ疾病の診断、治療または予防に重大な影響を与えるおそれがあるものとして、厚生労働大臣が指定する医療機器をいいます。
許可を取得するにあたっては、上記の修理区分に従った修理業の許可が必要となります。
例えば、特管第一区分の修理業許可を取得している場合であっても、非特管第一区分の医療機器の修理は、非特管第一区分の許可を有していなければ行うことはできません。
医療機器修理業の許可要件
以下の要件を満たすことにより医療機器の修理業を行うことができます。
(薬事法第40条の2、第40条の3)
(1)事業所の構造設備が次の基準を満たしていること
a. 構成部品等及び修理を行った医療機器を衛生的かつ安全に保管するために必要な設備を有すること。
b. 修理を行う医療機器の種類に応じ、構成部品等及び修理を行った医療機器の試験検査に必要な設備及び器具を備えていること。ただし、当該修理業者の他の試験検査設備又は他の試験検査機関を利用して自己の責任において当該試験検査を行う場合であって、支障がないと認められるときは、この限りでない。
c. 修理を行うのに必要な設備及び器具を備えていること。
d. 修理を行う場所は、次に定めるところに適合するものであること。
イ) 採光、照明及び換気が適切であり、かつ、清潔であること。
ロ) 常時居住する場所及び不潔な場所から明確に区別されていること。
ハ) 作業を行うのに支障がない面積を有すること。
ニ) 防じん、防湿、防虫及び妨そのための設備を有すること。ただし、修理を行う医療機器により支障がないと認められる場合は、この限りではない。
ホ) 床は、板張り、コンクリート又はこれらに準ずるものであること。ただし、修理を行う医療機器により作業の性質上やむを得ないと認められる場合は、この限りでない。
ヘ) 廃水及び廃棄物の処理に要する設備又は器具を備えていること。
e. 作業室内に備える作業台は、作業を円滑かつ適切に行うのに支障のないものであること。
(2)事業所に責任技術者を設置すること
責任技術者になるための資格要件は以下のとおりです。
a. 特定保守管理医療機器の修理を行う修理業者 イ又はロのいずれかに該当する者
イ) 医療機器の修理に関する業務に3年以上従事した後、別に厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣の登録を受けた者が行う基礎講習及び専門講習を修了した者
ロ) 厚生労働大臣がイに掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
⇒以下の者が「同等以上の知識経験を有すると認めた者」に該当します。
特管第一区分:社団法人日本画像医療システム工業会が実施した医用放射線機器点検技術者認定講習会(第1回から第9回)受講者
特管第二区分:社団法人日本エム・イー学会が実施する第2種ME技術実力検討試験合格者(第1回から第17回)
b. 特定保守管理医療機器以外の医療機器の修理を行う修理業者 イ又はロのいずれかに該当する者
イ) 医療機器の修理に関する業務に3年以上従事た後、a.イ)の基礎講習を修了した者
ロ) 厚生労働大臣がイに掲げる者と同等以上の知識経験を有すると認めた者
(3)申請者が欠格条項に該当しないこと
a. 薬事法第75条第1項の規定により許可を取り消され、取消しの日から3年を経過していない者
b. 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった後、3年を経過していない者
c. 薬事法、麻薬及び向精神薬取締法、毒物及び劇物取締法その他薬事に関する法令又はこれに基づく処分に違反し、その違反行為があった日から2年を経過していない者
d. 成年被後見人又は麻薬、あへん若しくは覚せい剤の中毒者
e. 心身の障害により業務を適正に行うことができない者として厚生労働省令で定めるもの
申請時提出書類一覧(東京都の場合)
1. 医療機器修理業許可申請書
2. 事業所の構造設備に関する書類
1) 構造設備の概要一覧表
2) 案内図(最寄りの駅から事務所までの地図を添付)
3) 建物の配置図(敷地内に複数の建物がある場合のみ添付)
4) 作業場所の平面図(修理・保管・試験場所などを寸法・面積とともに記載)
5) 保管設備の詳細図(構成部品、未修理品、修理完了品棚の立体図を添付し寸法を記載)
6) 修理用機械器具一覧表
7) 試験検査用機械器具一覧表
3. 登記事項証明書(申請者が法人の場合)
申請日より6か月以内に発行されたもの
4. 役員の業務分掌表(申請者が法人の場合)
登記された役員が一人の場合、役員全員が「業務を行う役員」である場合は添付不要
5. 申請者の診断書
申請日より3か月以内のもの
「業務を行う役員」の分のみ添付
「業務を行う役員」のうち、薬事に関する業務の意思決定等に直接関与していないとみなされる役員(海外在住の代表取締役等)は、診断書の代わりに疎明書でも可
6. 責任技術者の雇用証明書
7. 責任技術者の資格を証明する書類
1) 「基礎講習修了証の原本と写し」
2) 「専門講習修了証の原本と写し」
(原本は照合後に返却されます)
8. 業者コード登録票
書類提出先(東京都の場合)
健康安全研究センター医療機器監視課
許可の有効期間
許可の有効期間は5年です。
引き続き業務を行う場合には、更新申請手続が必要になります。
また、当初の申請内容に変更があった場合には、変更届けが必要です。
当事務所に許可申請をご依頼の場合
報酬額150,000円(税込)より
※難易度に応じます。
許可取得後の遵守事項
医療機器の修理に当たっては、以下のように遵守しなければならない事項があります。
【特定保守管理医療機器の修理の場合】
1. 責任技術者の意見の尊重
修理業者は、責任技術者が義務を履行するために必要と認めて述べる意見を尊重しなければなりません。
2. 修理、試験等に関する記録の作成
責任技術者は、次の記録を作成しなければなりません。
1)修理及び試験に関する記録
2)事業所の管理に関する記録(責任技術者の継続的研修の受講状況、品質確保の状況等について記載する)
苦情があった場合、回収等を行った場合は、次の記録を3年間保存します。
1)苦情処理の記録(苦情の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載)
2)回収処理の記録(回収の内容、原因究明の結果及び改善措置を記載)
3)教育訓練の実施の記録
3. 文書の作成
事業所ごとに次の文書を作成し、それに基づいて適正な方法により修理を行います。
1) 業務の内容に関する文書
「業務の内容に関する文書」とは、実際にどのような医療機器の修理を行うかといった医療機関等の顧客に対する「業務案内書」を意味します。
2) 修理手順その他修理の作業について記載した文書
取り扱う医療機器の種類ごとの「修理手順書」を意味します。
この場合、製造販売業者から適切な文書の提供を受けてその文書を備え付けることをもって自ら作成したものに代えることができます。
4. 苦情処理
修理した医療機器の品質等に関して苦情があったときは、その苦情に係る事項が自らに起因するものでないことが明らかな場合を除いて、苦情に係る原因を究明し、処理に係る作業管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じます。
5. 回収処理
修理した医療機器の品質等に関する理由より回収を行った時は、その回収に至った理由が自らに起因するものでないことが明らかな場合を除いて、次の業務を行わなければなりません。
1) 回収に至った原因を究明し、修理に係る作業管理又は品質管理に関し改善が必要な場合には、所要の措置を講じます。
2) 回収した医療機器を区分して一定期間保管した後、適切に処理します。
6. 教育訓練の実施
作業員に対して、医療機器の修理に係る作業管理及び品質管理に関する教育訓練を実施します。
7. 製造販売業者への通知
1) 医療機器の修理(軽微なものを除く)をしようとするときは、あらかじめ当該医療機器の製造販売業者に通知しなければなりません。
(ただし、機器を使用する者の生命又は身体を保護するため緊急やむを得ない場合その他正当な理由がある場合は、修理後速やかに通知します。)
なお、軽微な修理とは、製造販売業者が、予め想定される故障の状況と、それに対応する修理方法を文書で通知した修理の形態であって、医療機器の性能及び安全性に重大な影響を及ぼすおそれのないものをいいます。
2) 当該医療機器の製造販売業者から、修理に関する注意事項について指示を受けた場合は、それを遵守しなければなりません。
8. 添付文書の記載事項の確認
最新の添付文書の記載に基づいて、適正使用情報を修理依頼者に提供しなければなりません。このため、製造販売業者から最新の添付文書を入手するように努める必要があります。
9. 修理品への記載
修理した医療機器又はその直接の容器若しくは被包に次の事項を記載します。
1) 氏名及び住所
2) 修理を行った年月日
10. 修理依頼者への修理内容の通知
医療機器の修理依頼者に対して、修理の内容を文書により通知しなければなりません。
なお、修理依頼者の承諾を得て、修理内容の通知をCD-ROMや電子メールにより提供することができます。
11. 不具合発生時の対応 |
修理した医療機器について、当該医療機器の不具合その他の事由によるものと疑われる疾病、障害若しくは死亡の発生または当該医療機器の使用によるものと疑われる感染症の発生に関する事項を知った場合で、保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要がある時は、製造販売業者又は外国特例承認取得者にその旨を通知しなければなりません。
12. 責任技術者の継続的研修
責任技術者は毎年度実施されている継続的研修を受講しなければなりません。
13. 変更の届出
次の事項に変更があった場合は、変更後30日以内に届出が必要です。
1) 修理業者又は責任技術者の氏名又は住所
2) 事業所の名称
3) 業務を行う役員の氏名(法人の場合)
4) 事業所の構造設備の主要部分
ただし、修理区分の変更・追加は許可を受けなければなりません。また、申請者を変更する場合や事業所を移転する場合にも、新たに許可が必要となります。
14. 許可証の掲示
事業所の見やすい場所に許可証を掲示します。
【特定保守管理医療機器以外の医療機器の修理の場合】
1. 責任技術者の意見の尊重
2. 修理及び試験に関する記録の作成
1) 修理及び試験に関する記録
2) 事業所の管理に関する記録
3. 苦情処理
4. 回収処理
5. 製造販売業者への通知
6. 修理品への記載
7. 添付文書の記載事項の確認
8. 不具合発生時の対応
9. 責任技術者の継続的研修
10. 変更の届出
11. 許可証の掲示
ただし、できる限り特定保守管理医療機器の修理業者と、同等の対応をすることが望ましいとされています。